中島 秀憲(なかじま ひでのり)さん:サーフィンフォトグラファー1962年3月8日生まれ 大阪市出身。 | ||
はじめに
当企画インタビューを行った日の直前まで、タヒチへ取材に行かれていたとのことで、本日はそのタヒチで撮影された写真をお持ち頂いたとのことです。では、早速お話を伺って行きましょう。
――今回は出演に快諾いただきましてありがとうございます。この「写真家に聞くSILKYPIXの魅力」の企画も、中島さんご出演の回で5人目を迎えるのですが、スポーツ関係のフォトグラファーの出演は今回初となります。また違った視点からお話を伺えればと思いますので、宜しくお願い致します。
中島宜しくお願いします。
――この写真*1、凄いですね。大迫力でスピード感があって、波の形状もまた美しいです。初歩的な質問で恐縮ですが、この写真はどう撮ってるんですか?
中島これはいわゆるハウジングって言うケースにカメラを入れて、足ヒレだけ付けてポイントまで泳いでいって、それで撮るんですけれども。
――え?泳いでいって浮かんだ状態でってことですか?特に何かに乗ってるわけではなく?
中島場所によってはボディーボードを使ったりって時もあるんですけど、この撮影はフィッシュアイレンズなんですけれども、こういう場合は泳いでいって撮って、って感じですね。ポイントによって違うんですが、望遠系のレンズを使うときはボディーボードに乗っていって撮る場所もあるんですけど。
――では、この写真の直後は波に巻き込まれる感じになるんですか?
中島「この後どうなるんですか?」ってよく皆さんに聞かれるのですが(笑)、この後は波の中に入って、波の裏に出るって感じですね。波に一緒に巻かれてドカーン!って感じではないですね。中に潜ってそのまま、若干手前の方に持っていかれつつも波の後ろに出るっていうね。
――なるほど。この被写体の方は、浮かんでいる中島さんの目の前を通過して行くということですよね。
中島そうですそうです。
――フィッシュアイレンズって事ですから、かなり至近距離ですね。
中島ほんとに目の前です(笑)。で、もっとぎりぎりの時は、片手だけ出してノーファインダーで撮る感じです。両手でも撮れるんですけど、片手だともっとぎりぎりまで待てるので。
写真を始めたきっかけ
――中島さんは、サーフィン写真を撮影され始める前も元々写真を趣味にされていたのですか?サーフィンを始めてから写真を撮り始めたんですか?
中島厳密に言うと写真の方が先ですけど、それはなんでかって言うと子供の時に鉄道写真を撮っていたんですよ。
――そうなんですか!
中島「鉄ちゃん」です。僕の場合は汽車ですね、まだSLが走っていたので。SLが好きでSLの写真を撮っていたのが小学校の頃からなんですよ。
――SILKYPIXのWEBコンテンツで「鉄道写真掲示板」をご存知ですか?
中島そうですよね、知ってます。
――多くのユーザーさんに支えられております(笑)。
中島一番撮っていたのは小学校くらいの時で、その後ほとんど撮らない時期もあって、それでたしか高校3年のときにサーフィンを始めだしてはまっていったんですけど、なにかしらサーフィンの仕事に関わる仕事がしたいなと思った時に、雑誌を見てて「おっ、そうだ!サーフィンの写真を撮ってみようかな。」と思い出したのがきっかけです。
――へぇー。プロフィールを拝見すると、20代前半と早い時期からフリーで活動されはじめたとのことで?
中島まあ詳しく言えばそうですけど、当初の頃は全然食えなかったですよ(笑)。
――それから徐々にサーフィン雑誌の撮影で活躍され始めたんですか?
中島そうですね(笑)。
デジタルカメラへの移行
――撮影されはじめた頃は当然フィルムカメラだったと思いますが、デジタルカメラを使い始めたのはどのくらいの時期でしたか?
中島えーと、たしか2004年からでしたね。一番最初に使い始めた機種が、キャノンのEOS Kiss Digitalでした。
――フィルムからデジタルに移行してみようと思ったきっかけみたいのものってありましたか?
中島その当時はまだ、デジタルカメラがそんなに今みたいに普及していなかったので、僕の回りもほとんどの人がフィルムで撮影していて、まだデジタルだと色も良くないし印刷してもノイズが出るとかそういう評判がかなり多かったので、まだまだそんなに使う人がいなかったんですよ。でも、僕的には興味本位で試してみたくて、ちょっとやってみたいなと思って、で、最初使うようになったんですよね。
――なるほど。
中島一番のメリットとしては、撮ってすぐ見られる、フィルムだと現像しないと見られないというのがあったんで、それが一番大きな魅力でしたね。撮って現場ですぐにチェックできるっていうのがね。たとえばこの写真*2、チューブって言うんですけど、チューブの中の写真がすぐにどういう風に撮れているか確認できるので、例えば次はもっと近くに寄ったほうが良いかなとか、もうちょっと離れたほうが良いとかすぐに確認できるのが大きな利点でした。
――いきなり水中撮影ではないですよね?(笑)
中島はい(笑)。まずは陸上からの撮影で試したのが最初で、その後水中撮影に使うようになりました。それと水中撮影では、やっぱり枚数がいっぱい撮れるってことですよね。フィルムだと36枚が限界じゃないですか。
――たしかにそうですね。
中島それがデジタルになって、特に水中撮影の場合だと1回海に入るとその後フィルム交換をしなくてよくなったので、昔だと1本(36枚)撮ると、一回陸に上がってフィルムを入れ替えて、って作業があったんですけれども、それが無くなってずーっと撮れるようになりました。
――大きい容量のメディアを入れておけば、かなりの枚数がいけますよね。
中島それで、逆にいっぱい撮りすぎて終わりがないって言う場合もありますね。フィルムだったら、チェンジのタイミングで一回休憩になったんだけど、ずーっとになってしまって休憩のタイミングが無くなったっていうこともあります(笑)。
――へぇー(笑)。
RAW撮影
――デジタルカメラを導入後からRAWでの撮影をされていましたか?
中島最初こそはJPEGで撮影していましたが、そうですね、2年目くらいからはRAWを使っていましたね。ずっとRAWとJPEGの同撮を使っています。
――動きの早い被写体を追う場合は、連写やデータ書き込みのスピードにおいてRAWは不利になる面もありますが、それでもRAWを選択する部分っていうのはどのあたりでしょうか?
中島やはり、画質が良いっていうのと、あとは色ですね、自分で決定できるっていうのがあったんで、RAWの方が自分に合ってると感じています。
――海の色とか、微妙な表現を実現させるにはRAWの方が断然有利だと思います。
中島フィルムの頃から、微妙な発色の違いっていうのは気にしていましたので、現在でも色調は重要な部分ですね。
SILKYPIXの使い方
中島そのあたりで、SILKYPIXは色調を決める上で選択肢が豊富なので良いですね。逆にいっぱい有りすぎて悩んでしまうくらい(笑)。
― たしかにバリエーションは豊富ですね(笑)。
中島テイスト・パラメータで好みの表現を探すのと、あと露出とホワイトバランス、調子の調整はしますね。
― たとえば、冒頭でご紹介していただきました写真*1で、こだわられた部分は?
中島僕、サーフィンの写真を撮っていて一番大事にしているのが、サーファーはもちろんなんですけれども、それ以上に波がメインにって考えているので、やっぱり基本は波の表現にこだわっています。
― たしかに波のシルエットや輝き具合が抜群に美しいです。そのあたりの表現においてもRAW撮影が効果を発揮しますね。ハイライト部分にも完全に白トビしてなければ階調を含んでいますし。
中島そうですね。あと水中で撮ってる時はそうでもないんですが、岸から望遠で撮る場合は、水飛沫や水蒸気みたいなものの影響でモヤッとしたりするのが多いので、それをRAWだと高画質にクリアにしたりできますので、JPEGだと限界がありますよね。
― 保有しているデータが限られているので、限界が早いですね。
中島良い作品に仕上げるには、SILKYPIXを使ってRAW現像が良いですね。
タヒチ取材の写真
― この写真は先日撮りたてほやほやな、タヒチでの写真ですね。
中島そうですね。
― この写真*Aは、ホテルですか?
中島ホテルのロビーからすぐ目の前のところなんですよ。
― 奥の景色はもちろんですが、フロアに映り込んだ景色が美しいです。おっ、この写真*Bも今回のタヒチですか?
中島はい。
― 素晴しいアーチ状の水飛沫ですね。これは陸上からの撮影ですか?
中島ええ、陸上からです。600mmのレンズです。
― すごいテクニックって印象を受けますが、有名なサーファーの方なんですか?
中島この方のことは知らなかったんですが、タヒチで撮影しているときに居た人でずば抜けて上手かったんで撮らせてもらいました。あとこの写真*C、一応サーフィン以外の写真もあったほうが良いかなと思って。
― ありがとうございます。これは、日本では見かけない花ですね。
中島これはタヒチの国の花で、「ティアレ」と言う名前です。日本で言う桜みたいなもんですね。すごい良い匂いがする花で。でこっち*Dが「プルメリア」で、なかなかこういう色の花が無いんですよ。珍しいみたいです。
― 可憐で色の綺麗な花ですね。
水中での撮影
― この写真*7もなんとも幻想的です。どちらでの撮影ですか?
中島これはハワイです。太陽が沈む直前で、みんなで波待ちしているところですね。
― この写真の仕上げのポイントは?
中島色調と明るさですね。シルエットをシルエットと表現する意図はあるんですけれども、暗くし過ぎてしまうと水面のキラキラした感じが消えちゃったりするので、その辺も出しつつシルエットを生かして、夕焼けのオレンジをどの程度出すかっていうところですね。
― なるほど。この時は水中での撮影ですか?
中島この時も…、浮かんでます。
― 前半でも伺いましたが、常に立ち泳ぎの状態ということですよね?
中島一応、言い方は立ち泳ぎなんですけど、泳いでるって感覚はあんまりないですね。浮いている感じで。ゆっくーり足を動かしているくらいで。バタバタ泳いでいるって感覚は全然ないです。
― そんな簡単に浮かんでいられるものですかね?(笑)
中島でもね、海水でウェットスーツ、フルスーツではないんですけれども半そで長ズボンくらいのウェットスーツを着ているので、それだけで浮力があるので何もしなくても全然浮いてますよ。
― きっと難しいような気がします(笑)。しかもカメラを持ってですよね。
中島僕のカメラ(ハウジング)は、基本的に同じような比率ですので、ブクブクって沈みはしないです、レンズの重さにもよるんですが。水の中で止まっている状態か、若干沈みがちな感じですね。密封はされてますが、中に空気も入っていますので。
― では、水上にカメラを浮かせてる状態ではそんなに負担にはならないと?
中島そうですね。逆にそれが浮力になるかって言うとそれは全然関係ないんですけど(笑)。
SILKYPIXのお気に入り機能
― では、SILKYPIXで気に入っている機能はありますか?
中島一番上の「テイスト・パラメータ」の中にある「ファインストリート」で、僕が気に入ったのは露出とホワイトバランスをオートで調整してくれるところですね。これが意外と気に入っていますね。自分が思っている表現に近い形で画像を仕上げることが出来ますね。
― ありがとうございます。「ファインストリート」は、確かに良く晴れた日向けのテイストで、ブルー系の色要素が多い中島さんの被写体には良くマッチすると思います。また、露出のオートモードももちろんですが、SILKYPIXのAWB(オートホワイトバランス)についても、精度には高評価を頂いている部分です。
中島これは最初に「おっ!」と思って、それから気に入っています(笑)。
― カット数が多いときは、テイストは写真を仕上げる上での時間短縮に大きな効果がありますね。多いときですと何カットくらいの納品になるんですか?
中島1000枚とか1500枚とか納めるときがありますね。望遠で撮る時は連写ですので、当然カット数が多くなるので、パラメータのコピー&ペーストとかバッヂ現像で一気にやっちゃいますね。あとは、「回転・デジタルシフト」が気に入っています。なぜかっていうと、やっぱ水平線が写っている場合は、どうしても注意していても水平線が真直ぐになっていない写真があるので、それを簡単に真直ぐできるのが便利ですね。
― 水中での撮影では体が揺れた状態でのレリーズになり、イメージより多少傾いてしまったりしそうです。
中島そうなんです。あともう一つ、「ハイライトコントローラー」の「ダイナミックレンジ」もよく使います。波の階調がどの程度残っているのかと思って調整しますね。
サーフィンフォトグラファー
― 実際にサーフィン写真を専門にしているフォトグラファーは、日本に何人くらいいらっしゃるんですか?
中島僕含めて10人いるかいないかぐらいですかね。
― そうなんですか?(驚)
中島他の分野のカメラマンさんと較べたら全然マイナーですけれどもね。専門でやってる人って言ったらそれくらいです。水中でサーフィンの写真を撮れる人はほんと限られているのでそういう意味では専門職だと感じます。
― 中島さん自身も、現在でもサーフィンをされることはあるんですか?
中島はい、あります。
― タヒチでは?
中島はい、やってきました(笑)。
― やっぱりご自身がサーフィンをやってないと、わからない部分ってきっとありますよね。例えば見せたいポイントとか、どう撮って欲しいとか。
中島それはあると思いますね。ある程度予想して動いて撮らないといけないっていうのはたしかにありますね。
読者の皆様へひとこと
― では、最後に読者の皆様へひとことをお願いします。
中島SILKYPIXは、海の色を自分の感じた通りに表現できるので、優れているなと思います。デフォルトの色調自体が良いのと、様々な調整方法でイメージに近いものが出来るので。
― ありがとうございます。SILKYPIXは、リニアリティの高い色再現性というのを特徴の一つとして持っていますので、その部分のご評価は嬉しい限りです。それと、これからサーフィンフォトグラファーを目指したいと思っている方へのアドバイスはありますか?
中島うーん、そうですね、サーフィンが好きでカメラが好きであれば誰でもなれると思いますけど(笑)。
― いやいやいや、そんな簡単ではないと思いますが(笑)。まあ、でも好きだということが最も重要ってことですよね。
中島はい、そうですね。
― 今度機会があれば、中島さんが水中で撮影しているのを見物してみたいです。その時はぜひお知らせいただければと思います。本日は海外ロケ帰りでお疲れのところ、ありがとうございました。
中島ありがとうございました。
― リニアリティ高い色再現が特徴のひとつであるSILKYPIXは、写真家の繊細な要求に応え、海の色を見たまま感じたままに写真表現することが可能となります。写真の色表現でお悩みの方は、RAW現像ソフトSILKYPIXをぜひお試し頂ければと思います。
【 2010年12月13日公開 】